月末最終営業日の朝、住宅ローン控除の証明書について尋ねる電話が窓口に立て続けに入る。来店客の対応中で電話に出られず、折り返すころには利用者はすでに他行や税務署の説明ページを自分で探し始めている——信用金庫・銀行の店頭ではこうした場面が珍しくありません。
平日の夜21時、給与振込口座の変更手続きに何を持っていけばよいかホームページで調べようとするが、FAQのどこに載っているか分からない。翌朝は忙しくて電話できず、結局同僚に聞いた記憶を頼りに来店し、窓口で「その書類では足りません」と言われて出直すことになる——こうしたすれ違いも起きがちです。
電話が集中する繁忙期と、営業時間外にしか調べる余裕がない利用者。どちらも人手が薄くなった窓口では拾いきれない場面です。銀行・信用金庫向けAIチャットボットとは、営業時間・店舗案内、必要書類の確認、来店予約の受付、定型的な手続き相談への回答を、ホームページやLINE上で自動化するツールです。金融商品の説明・勧誘や与信の判断は行わず、あくまで案内・一次受けに特化するのが基本設計で、限られた人員でも営業時間外や繁忙期の問い合わせを取りこぼさないのが最大の価値です。
目次
銀行・信用金庫向けAIチャットボットとは(定義)
銀行・信用金庫向けAIチャットボットとは、銀行・信用金庫がホームページやLINE公式アカウントに設置し、営業時間・店舗案内、必要書類の確認、来店予約の受付、口座変更やカード再発行といった定型的な手続き相談への回答を自動化する会話型ツールのことです。
金融機関は規制業種であるため、金融商品の説明・勧誘や与信の判断そのものをチャットボットに任せることはできません。liensが提供するAIチャットボットも同様に、金融商品の説明・勧誘・与信判断は一切行わず、FAQ・営業時間案内・来店予約・必要書類案内・定型的な手続き相談の一次受けに特化した設計を基本としています。専門的な相談や契約に関わる判断は、これまで通り行員・担当者が対応します。
窓口の一次対応が「詰まる」典型パターンは、次の3つに集約されます。
- 繁忙期に集中する定型的な問い合わせ — 確定申告の時期や年度末、住宅ローン控除の申告シーズンなど、特定の期間に証明書発行や必要書類の問い合わせが一斉に増える
- 窓口対応中は電話に出られない — 来店客の対応中に電話が鳴っても手が離せず、折り返すころには利用者が別の手段で調べ始めている
- 案内だけで済む相談と本人確認が要る相談が電話口で混ざる — オペレーターが「これは案内だけで済むか、本人確認が要る相談か」を都度判断してから窓口へつながなければならず、振り分けに時間がかかる
なぜ今、銀行・信用金庫にチャットボットが必要なのか——よくある疑問に答える
Q. なぜ今、銀行・信用金庫は電話・窓口対応だけに頼れなくなっているのですか?
A. 店舗・人員そのものが減っているためです。信用金庫の店舗数は1998年度末の8,673店をピークに減り続け、2024年度末には7,059店まで減少しました。26年連続の減少で、この間の減少率は約18.6%です。全国銀行108行でも、職員数は2016年3月末の296,595人から2025年3月末には263,202人へ、10年間で11.3%減少しました。一方で店舗数はほぼ横ばい(13,767→13,672店、-0.7%)のため、1店舗あたりの人員は年々薄くなっています。対象(店舗数か職員数か)も期間(26年か10年か)も異なるため単純比較はできませんが、年あたりのペースに揃えて計算すると、信用金庫の店舗減少は年約0.7%、全国銀行の職員減少は年約1.1%です。人員の減少ペースの方が店舗の減少ペースよりも速いということは、生き残っている店舗ほど1店舗あたりの人手はさらに薄くなっている可能性を示しています。
出典: 信金中央金庫「ニュース&トピックス No.2025-17」(2025年5月2日)/全国銀行協会「全国銀行資本金、店舗数、銀行代理業者数、役職員数一覧表」
Q. インターネットバンキングに切り替えてもらえば、電話や窓口の負担は減るのではないですか?
A. 実際にはまだ多くの利用者がネットバンキングを使っていません。全国銀行協会の調査では、パソコンでのインターネットバンキング利用率は39.2%、スマホアプリでも43.9%にとどまり、非利用者はそれぞれ60.8%・56.1%です。利用しない理由は「必要性を感じない」36.5%、「セキュリティに不安」32.6%、「手続きが煩雑」28.5%の順で多く、最多の理由が「使い方が分からない」のような情報不足系ではなく「必要性を感じない」である点は見過ごせません。つまり電話・窓口への依存は、操作に迷う利用者だけの現象ではなく、あえてネットバンキングを選ばない利用者層が一定数存在し続けていることの表れでもあります。
出典: 全国銀行協会「よりよい銀行づくりのためのアンケート(報告書)」(2024年10月)
Q. 店舗やATMの営業時間に、利用者は不満を感じていないのですか?
A. 同じ調査では、メインバンクの店舗営業時間について「十分」と回答したのは38.4%、ATM営業時間を「十分」としたのは48.9%にとどまりました。裏を返せば6割前後の利用者が営業時間に何らかの物足りなさを感じています。この2つの差は10.5ポイントあり、同じ調査の中でも「時間の融通が利く手段ほど満足度が高い」という傾向がうかがえます。営業時間外の問い合わせ・手続き相談の受け皿として、24時間対応できる窓口がどれだけ求められているかを裏づける数字です。
出典: 全国銀行協会「よりよい銀行づくりのためのアンケート(報告書)」(2024年10月)
Q. 実際に定型的な問い合わせをボイスボット・チャットボットに任せた事例はあるのですか?
A. あります。2025年、モビルスのボイスボット「MOBI VOICE」を導入した横浜銀行の事例(モビルス発表)では、住宅ローン証明書6種類の電話受付を自動化しました。繁忙期は月1,600件・1日最大150件にのぼる問い合わせのうち、一部証明書では電話受付の約9割がボイスボットのみで完結し、年間約445時間の業務削減が見込まれています。月間1,600件を単純に30日で割ると1日あたり平均約53件ですが、実際のピーク日は最大150件です。平均の約2.8倍にあたる問い合わせが特定の日に集中している計算になり、常設の電話体制だけでピーク日をカバーする難しさがうかがえます。これは横浜銀行自身の発表ではなくベンダー(モビルス)による発表である点には留意が必要ですが、住宅ローン証明書発行のような定型的な問い合わせから自動化を始める実例として参考になります。
Q. ここまでの数字を掛け合わせると、結局何が見えてきますか?
A. 「恒常的な人手の薄さ」と「繁忙期のスパイク」が重なっているということです。信用金庫の店舗、全国銀行の職員はどちらも減少が続いており、年あたりのペースでは職員減少(年約1.1%)の方が店舗減少(年約0.7%)より速く進んでいます。平常時から窓口一人あたりの負荷が増えている状態に、横浜銀行の事例のような繁忙期のピーク(平均の約2.8倍)が重なれば、窓口の対応力は瞬間的に大きく不足します。定型的な問い合わせをチャットボットが常時一次受けしておけば、平常時の薄い人員体制のままでもピーク日の負荷を吸収しやすくなります。なお、この解釈は複数の統計を組み合わせた本記事独自の試算であり、金融機関や協会がこの通りに算出・公表した数値ではない点にご留意ください。
出典: 上記4つの出典データを元にした本記事独自の試算

店舗・人員が減り続ける一方で、ネットバンキングへの完全移行もまだ道半ば——この現実の中で、営業時間外や繁忙期の定型的な問い合わせを一次受けする仕組みは、限られた人員を支える現実的な選択肢になっています。次の章では、電話・窓口対応、インターネットバンキングと比べて何が変わるのかを比較します。
電話・窓口対応、インターネットバンキングとの比較

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| 電話・窓口対応のみ | インターネットバンキングのみ | AIチャットボット | |
|---|---|---|---|
| 対応できる時間 | 営業時間内の窓口・電話対応が前提 | 24時間利用できるが自分で操作が必要 | 24時間、チャットで一次受付 |
| 繁忙期の問い合わせ集中 | 電話が集中しつながりにくい | システムでは個別の質問に答えられない | 定型的な問い合わせを自動で振り分け |
| 必要書類・手続きの確認 | その都度電話や来店で確認が必要 | サイト内を自分で探す必要がある | 必要書類・手続きの案内をその場で表示 |
| 来店予約 | 電話予約のみ、対応中は保留に | 該当なし(予約機能はない) | 来店予約の受付まで自動化 |
※チャットボットは金融商品の説明・勧誘や与信判断を代行するものではなく、あくまで案内・一次受けに特化します。住宅ローンや資産運用など具体的な商品相談・契約に関わる判断は、引き続き窓口・担当者が対応する併用が前提です。
銀行・信用金庫のチャットボットで特に問われるのは、応答スピード以上に「何を答えないか」の設計です。定期預金の金利や手数料の具体的な数字、住宅ローンの審査可否といった判断に関わる内容まで踏み込んで回答してしまうと、実際の条件と食い違った場合に誤案内としてのトラブルに直結しかねません。加えて、銀行を装ったフィッシング詐欺のメッセージやサイトが後を絶たない中、チャットボットが暗証番号やパスワードの入力を求めるような設計になっていると、利用者はフィッシング詐欺と見分けがつかなくなります。公式ドメインでの運用を明示し、口座番号・暗証番号・パスワードの類は画面上で絶対に尋ねない、という制約を最初から組み込むことが、他業種以上に重要になります。
銀行・信用金庫での主な活用シーン
- 営業時間・店舗案内 — 最寄り店舗の営業時間、休業日、ATM設置場所を24時間案内
- 必要書類の確認 — 住宅ローン証明書や口座開設に必要な書類の一覧を自動案内し、電話問い合わせを削減
- 来店予約の受付 — ローン相談や口座開設の来店予約をチャット上で受け付け、窓口の混雑を平準化
- 定型的な手続き相談の一次受け — 住所変更やカード再発行など、よくある手続きの質問に自動回答し、必要に応じて担当窓口へ引き継ぐ
- 繁忙期の電話集中の緩和 — 確定申告時期や年度末など、問い合わせが集中する時期の一次対応を自動化
住宅ローン控除の証明書について電話で問い合わせが来たとき、電話だと何が起きるでしょうか。典型的には次の4工程をたどります。
- 電話がつながるまで待たされる(案内テープや保留音が流れる)
- オペレーターが必要書類を口頭で説明する——源泉徴収票、登記事項証明書、住民票など複数の書類名を電話越しに聞き取る必要がある
- 証明書の名称の聞き間違いや、控除の種類(住宅ローン控除か住宅取得資金の贈与か等)の勘違いが起きやすく、後日窓口で「その書類では足りません」と追加提出を求められることがある
- 再来店または再度の電話でのやり取りが発生する
チャットボットであれば、「住宅ローン控除の証明書について知りたい」を選択式で選ぶだけで、必要書類の一覧がテキストとリンクでその場に表示されます。聞き間違いによる後日の再提出という工程そのものを減らせるのが強みです。
失敗しない選び方のチェックポイント
- 金融商品の説明・勧誘・与信判断に踏み込まない設計か — 案内・一次受けに特化し、契約内容の説明や与信の判断は引き続き行員が行う設計になっているか
- 個人情報・口座情報の取り扱い — 口座番号や残高照会などの機微情報をチャット上でやり取りしない設計になっているか
- フィッシング詐欺の偽サイトと誤認されない設計か — 公式ドメインでの運用を明示し、暗証番号・パスワード・口座番号の入力を絶対に求めないUI設計になっているか
- 未回答質問の記録と改善 — 答えられなかった相談を記録し、案内内容の改善に活かせる仕組みがあるか
- 総額の透明性 — 初期費用・月額に加え、案内内容の更新のたびに追加費用が発生しないか
よくある質問(FAQ)
Q. 住宅ローンや投資信託など、金融商品の説明や提案までしてもらえますか?
A. いいえ。案内・一次受けに特化する設計が基本で、金融商品の説明・勧誘や与信の判断は行員・担当者が行います。チャットボットが担うのは、営業時間案内・必要書類の確認・来店予約受付などの定型的な問い合わせです。
Q. 定期預金の金利や手数料について聞かれたら、チャットボットはどう答えますか?
A. 具体的な金利水準や手数料額をその場で提示するのではなく、最新情報が載っている商品ページへ案内する、または窓口・担当者へおつなぎする設計にするのが安全です。金利や手数料は改定されやすく、チャットボットの回答内容が古いまま残ると誤案内になりかねないためです。
Q. フィッシング詐欺の偽サイトと誤解されないための工夫はありますか?
A. 必要です。公式ドメイン・公式アカウントであることを画面上で明示し、暗証番号・パスワード・口座番号の入力を求めないUI設計にします。銀行を装った偽サイトが後を絶たない中、正規のチャットボットが機微情報を尋ねる作りになっていると、利用者が両者を区別できなくなるためです。
Q. カード紛失や口座凍結解除など、本人確認が必要な相談が来たらどうなりますか?
A. チャットボットはその場で本人確認を完結させず、手続きの流れ(必要書類・連絡先・営業時間内の受付窓口)を案内したうえで、実際の本人確認と手続きは窓口や電話担当につなぐ設計にします。
Q. 信用金庫のような地域密着型の金融機関でも、同じように使えますか?
A. はい。基本設計(案内・一次受けに特化)は共通ですが、会員・組合員向けの案内文言や、地元の制度・キャンペーンに関する案内はカスタマイズできます。都市銀行と同じ枠組みのまま、地域特有の内容を組み込む形になります。
Q. 公開後、金利改定やキャンペーンなど変わりやすい情報の更新はどう運用しますか?
A. サービスによります。運用代行型(フルマネージド)なら、質問リストの整理から、金利改定・キャンペーンなど変わりやすい情報の更新まで事業者が代行します。自社運用の場合は、変更が起きるたびに案内内容を更新する運用体制を先に決めておくことが定着の条件です。
まとめ: 案内・一次受けに徹し、行員は専門相談に集中する
信用金庫の店舗数は26年で18.6%(年換算で約0.7%)、全国銀行の職員数は10年で11.3%(年換算で約1.1%)減少しており、生き残った窓口ほど1店舗あたりの人手は薄くなっています。一方でインターネットバンキングの利用率もまだ4割前後にとどまり、電話・窓口を頼る利用者は今も多数派です。ここに横浜銀行の事例のような繁忙期のスパイク(平均の約2.8倍)が重なれば、窓口の対応力は瞬間的に不足します。金融商品の説明や与信判断、フィッシング詐欺と誤認されかねない機微情報のやり取りは行員や専用の仕組みに残したまま、営業時間案内・必要書類確認・来店予約といった定型的な問い合わせだけを一次受けすることが、限られた人員で窓口を支える現実的な選択肢です。
定型的な問い合わせの一次受けを、まず自社の窓口で試してみませんか。運用代行型(フルマネージド)「LIENS BOT」なら、シナリオ構築から公開後の改善まで任せられます。14日間の無料トライアル(クレジットカード登録不要)で、営業時間案内や来店予約の自動化がどこまでできるかをお確かめください。
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出典一覧
- 信金中央金庫「ニュース&トピックス No.2025-17」(2025年5月2日)
- 全国銀行協会「全国銀行資本金、店舗数、銀行代理業者数、役職員数一覧表」
- 全国銀行協会「よりよい銀行づくりのためのアンケート(報告書)」(2024年10月)
- モビルス株式会社 プレスリリース
- モビルス株式会社 続報プレスリリース(PR TIMES)
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