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レガシーシステムからの脱却、なぜ今動くべきか——「2025年の崖」から7年で分かったこと

レガシーシステムからの脱却、なぜ今動くべきか——「2025年の崖」から7年で分かったこと

2018年、経済産業省は「このままでは2025年以降、最大12兆円/年(現在の約3倍)の経済損失が生じる可能性がある」と警鐘を鳴らした。老朽化した基幹システムを抱える企業はすでに約8割、それをDXの足かせと感じる企業は約7割にのぼっていた——これが「2025年の崖」だ。

あれから7年。「2025年」は、もう過ぎた。経済産業省が2025年5月に公表した続報によると、レガシーシステムを保有する企業はいまも61%——崖は、まだ降り切れていない。放置のコストと、liensが受託開発で採っている「小さく作って試す」進め方を、最新のデータで見ていく。

目次

  1. 経産省自身が「スピード感に欠ける」と認めた進捗
  2. システムは減っても、人材不足は深刻化している
  3. なぜ「一気に全面刷新」も危険なのか
  4. 「小さく作って試す」——liensの進め方
  5. 年表で振り返る、崖から7年で分かったこと
レガシーシステムの現在地を示す4つの指標。レガシーシステムを保有する企業61%(n=516)、大企業のレガシーシステム保有率74%(n=402)、中期経営計画に大規模刷新を記載する大企業12%、IT人材の需要に対するベンダー供給の充足率66%
「2025年の崖」から7年、企業の61%がいまもレガシーシステムを保有(出典: 経済産業省「DXの現在地とレガシーシステム脱却に向けて レガシーシステムモダン化委員会総括レポート」2025年5月28日をもとに作成)

経産省自身が「スピード感に欠ける」と認めた進捗

2025年5月28日、経済産業省は「DXの現在地とレガシーシステム脱却に向けて」と題した続報を公表した。約4,000社に配布し799社が回答した調査などをもとに、2018年の警告からの進捗をまとめたものだ。結論は率直だった。「2025年の崖を迎える中、産業界のDXおよびレガシーシステム脱却の進捗は依然としてスピード感に欠ける」——経産省自身が、こう総括している。

実際の数字を見ると、レガシーシステムを保有する企業は全体で61%(n=516)。企業規模別では、投資体力のある大企業のほうがむしろ保有率が高く74%(n=402)にのぼる。中小企業は大企業より低いものの、同レポートは「投資体力の他、経営としてのITリテラシーや人材リソースの問題が顕著」だと指摘する。規模を問わず、老朽システムへの依存は根深い。

さらに、大企業に限っても、中期経営計画に大規模システムの導入・刷新を記載している企業はわずか12%(TOPIX100対象、ボストン コンサルティング グループ調査。経済産業省の同レポートに引用)。約9割の企業が、経営レベルの計画にシステム刷新を位置づけられていない。

システムは減っても、人材不足は深刻化している

IPA(情報処理推進機構)「DX動向2024」によると、レガシーシステムが「ない」または「一部領域に残る」と回答した企業の合計は、2022年度の40.4%(n=542)から2023年度は58.0%(n=1,002)に増加した。システムの若返り自体は、緩やかにではあるが進んでいるようだ。

しかし、それを支えるはずの人材は逆方向に動いている。同じ調査で、DXを推進する人材の「量」が「大幅に不足」「やや不足」と回答した企業の合計は85.7%(2023年度、n=745)。経済産業省の別の試算では、2025年度のIT人材需給ギャップで、ユーザー企業の需要に対しベンダー企業の供給は66%の充足率にとどまる——3社に1社分の人手が、そもそも足りていない計算になる。特にビジネス/ITアーキテクトやデータサイエンティストといった上流人材に絞ると、充足率は63%までさらに下がる。

システムを新しくしようにも、それを担う人が足りない。この矛盾が、崖を降りきれない大きな理由の一つになっている。

なぜ「一気に全面刷新」も危険なのか

崖の存在を認識しても、対処の仕方を誤れば同じように行き詰まる。多くの企業が陥りやすいのは、「先送りする」か「一気に全面刷新する」かの二択で考えてしまうことだ。

先送りは分かりやすい。サポート切れや担当者の退職といった、自分でコントロールできないタイミングで問題が突然表面化する。放置している間、セキュリティリスクは高まり続ける。

一方、一気に全面刷新するという選択も安全ではない。要件をすべて固めてから一括で投資する進め方は、認識のズレがテスト工程まで発覚しないまま進みやすい(「業務システム受託開発、失敗しないための進め方」で解説した手戻りコストの構造そのものだ)。大規模投資を最初に一括で決める分、判断を誤ったときの損失も大きい。

レガシーシステムへの向き合い方の比較。何もしない(先送りする)/一気に全面刷新する/liensの小さく作って試す進め方の3列。初期費用・意思決定の重さ、問題が起きるタイミング、セキュリティ・保守切れリスク、投資の判断材料の4項目で比較し、liensの進め方がフォーカス列
「先送り」も「一気に全面刷新」も、一度に全部を決めてしまう点は同じ

どちらの選択も、「一度に全部を決めてしまう」という点で共通している。問題が起きるタイミングも、投資の失敗も、コントロールしづらいままだ。

「小さく作って試す」——liensの進め方

liensが受託開発で採っているのは、一番困っている業務を1つ選び、小さく作って実際に使いながら広げていく進め方だ(詳しくは「業務システム、既製ソフトと受託開発どちらを選ぶべきか」)。

  • 一番困っている業務(レガシーシステムに一番依存している業務)を1つ選ぶ——全社のシステムを一度に置き換えようとしない
  • その業務だけを動くかたちで小さく作り、実際に使ってみる——見積もりではなく実測値で判断できる
  • 良ければ次の業務へ広げ、違えば軌道修正する——優先度の高い箇所から順にレガシーを解消していく

先送りのように問題が突然表面化することもなければ、一気に全面刷新するように大きな判断を一度に迫られることもない。試算の立て方は「業務システムのROI、何を数字に入れて試算すればいいのか」で詳しく解説している。

年表で振り返る、崖から7年で分かったこと

ここまでの数字を、時系列に並べ直してみる。

時期 出来事・数字
2018年9月 経産省「DXレポート」公表。老朽システム保有約8割・DXの足かせ約7割・基幹系21年以上稼働見通し6割・IT人材不足2025年43万人予測
2022年度 レガシーシステム「ない・一部領域に残る」計 40.4%(IPA「DX動向2024」、n=542)
2023年度 同上 58.0%に増加(n=1,002)/一方でDX人材「不足」85.7%(n=745)
2025年5月 経産省が続報を公表。レガシーシステム保有率61%(n=516)。「進捗は依然としてスピード感に欠ける」と総括
2025年度 IT人材需給、ベンダー企業の供給充足率66%(経産省試算)

8年分の数字を並べると見えてくるのは、崖を「越えたか越えていないか」の一点ではなく、システムの若返りと人材不足がねじれたまま並走している現在地だ。放置すれば崖はそのまま残り、一気に全部を刷新しようとすれば別のリスクを抱える。今日からできるのは、その両方を避けて、一番困っている業務から小さく動き出すことだ。

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関連記事: 業務システム、既製ソフトと受託開発どちらを選ぶべきか / 業務システム受託開発、失敗しないための進め方 / 業務システムのROI、何を数字に入れて試算すればいいのか

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